修繕積立金の目安はいくらか — 国交省ガイドラインの読み方と不足の現実

確認日 2026-10-10

結論: 国土交通省のガイドラインが示す修繕積立金の目安は、20階未満のマンションで1㎡あたり月252〜335円(平均値)、20階以上で338円です。たとえば専有70㎡・15階建・延床8,000㎡なら、平均値で月約17,640円(目安の幅は約11,900〜22,400円)になります。ただしこの目安は「長期修繕計画の期間全体の平均額」なので、今の月額とそのまま比べるのではなく、計画書の数字で計算し直して比べるのが正しい使い方です。

修繕積立金の値上げ案が総会に出てきたとき、「この金額は高すぎるのか、それとも今までが安すぎたのか」を判断する材料として、国の公表資料はかなり使えます。この記事では、国交省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」と「令和5年度マンション総合調査」をもとに、自分のマンションで確かめる手順を区分所有者・理事の方向けに整理します。

この記事の数値は、2026年10月9日〜10日に確認した公的資料に基づきます。出典は各段落の注と末尾の出典一覧に記載しています。


1. 国交省ガイドラインの月額目安

ガイドラインの位置づけ

「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」は国交省が平成23年4月に策定し、令和6年6月に改定したものです(2026年10月10日時点で、国交省のページ上の最終改訂は令和6年6月7日)12。購入予定者と区分所有者・管理組合が、修繕積立金の水準を判断する際の参考材料として作られています3。

目安は、長期修繕計画作成ガイドラインにおおむね沿って作られた366事例の長期修繕計画を集計したものです。計画期間全体で必要な修繕工事費を、専有面積1㎡あたりの月額に直して示しています4。

目安の表(機械式駐車場を除く)

区分は「地上階数」と「建築延床面積」で決まります。専有面積の合計ではなく、建物全体の延床面積で見る点に注意してください5。

地上階数建築延床面積平均値事例の3分の2が収まる幅
20階未満5,000㎡未満335円/㎡・月235〜430円
20階未満5,000㎡以上〜10,000㎡未満252円/㎡・月170〜320円
20階未満10,000㎡以上〜20,000㎡未満271円/㎡・月200〜330円
20階未満20,000㎡以上255円/㎡・月190〜325円
20階以上(面積区分なし)338円/㎡・月240〜410円

出典: 5

小規模なマンションほど単価が高いのは、工事量がまとまるほど単価が下がる傾向があるためと説明されています。20階以上を分けているのは、特殊な足場が必要になるなどで修繕工事費が増える傾向があるためです56。

機械式駐車場がある場合の加算

機械式駐車場は修繕費が大きいため、上の目安とは別に次の式で加算します7。

加算額(円/㎡・月)= 1台あたり月額の修繕工事費 × 台数 ÷ マンションの総専有床面積

機種1台あたり月額の修繕工事費
2段(ピット1段)昇降式6,450円/台・月
3段(ピット2段)昇降式5,840円/台・月
3段(ピット1段)昇降横行式7,210円/台・月
4段(ピット2段)昇降横行式6,235円/台・月
エレベーター方式・垂直循環方式4,645円/台・月
その他5,235円/台・月

出典: 7

駐車場の修繕費を駐車場使用料で賄う会計にしている場合は、この加算は不要とされています7。

目安は「期間全体の平均額」

この目安は、長期修繕計画の計画期間全体での平均額です。ガイドラインは、自分のマンションの数値を次の式で出して比べる方法を示しています8。

Z(円/㎡・月)=(A + B + C)÷ X ÷ Y

A: 計画期間当初の修繕積立金の残高 / B: 計画期間全体で集める修繕積立金の総額 / C: 計画期間全体の専用使用料等からの繰入額の総額 / X: 総専有床面積(㎡)/ Y: 計画期間(か月)

A・B・Cは長期修繕計画に書かれています9。ガイドラインのモデルケース(10階建・延床7,000㎡・総専有4,900㎡・計画30年、3段昇降式の機械式駐車場30台)では、Z=4億2,460万円÷4,900㎡÷360か月≒241円。目安は252円+駐車場加算36円=288円、幅は206〜356円なので、「幅の中に収まっている」と判定されています910。

また、ガイドラインは幅に収まっていないからといって直ちに不適切と判断されるわけではないと明記しています。その場合は長期修繕計画の内容や積立方法を確認することが大切、という位置づけです11。

2. 自分のマンションで計算してみる

早見表: 専有面積 × 平均値(機械式駐車場なし)

ガイドラインの平均値に専有面積を掛けた月額です。試算であり、自分のマンションの必要額を示すものではありません。

専有面積5,000㎡未満(335円)5,000〜1万㎡(252円)1万〜2万㎡(271円)2万㎡以上(255円)20階以上(338円)
50㎡16,750円12,600円13,550円12,750円16,900円
60㎡20,100円15,120円16,260円15,300円20,280円
70㎡23,450円17,640円18,970円17,850円23,660円
80㎡26,800円20,160円21,680円20,400円27,040円

計算式: 月額(円)= ガイドラインの平均値(円/㎡・月)× 専有面積(㎡)。1〜4列目は20階未満の延床面積区分。単価の出典: 5

計算例1: 70㎡・15階建・延床8,000㎡

仮定: 地上15階建、建築延床面積8,000㎡、自分の住戸の専有面積70㎡、機械式駐車場なし。

計算例2: 同じ建物に機械式駐車場がある場合

仮定: 計算例1の建物で、総専有床面積5,600㎡(70㎡×80戸)、2段(ピット1段)昇降式の機械式駐車場20台。

比べるときの注意

3. 総合調査で見る「不足」の実態

国交省の「令和5年度マンション総合調査」(管理組合1,589件・区分所有者3,102件が回答)から、修繕積立金に関わる数字を抜き出します14。

項目割合・金額出典
計画に比べて積立額が不足しているマンション36.6%15
うち不足が20%を超えるマンション11.7%15
計画期間25年以上の長期修繕計画に基づいて積立金額を設定全体の59.8%(積立金制度がある管理組合の62.4%)16
長期修繕計画の計画期間が30年以上72.7%16
現在の積立方式: 均等積立 / 段階増額積立40.5% / 47.1%15
月・戸あたり修繕積立金の平均(駐車場使用料等からの充当を除く)13,054円16
管理費・修繕積立金を3か月以上滞納している住戸があるマンション30.1%(築年数が古いほど高い傾向)17
管理組合運営の将来への不安「修繕積立金の不足」39.6%17
区分所有者が挙げる取り組むべき課題「修繕積立金の積立金額の見直し」36.2%(最多)17

3割強のマンションで計画どおりに積み立てられておらず、約4割の管理組合が将来の不足を心配しています。一方で、計画期間25年以上の長期修繕計画に基づいて金額を決めているのは全体の約6割です。自分のマンションの積立金を判断する前提として、長期修繕計画がいつ作られ、何年分を見込んでいるかを確認しておくとよいでしょう。

なお、上の13,054円は全国の平均で、規模や築年数を区別していません。自分のマンションと比べる用途には、第1章の目安と計算式の方が向いています。

4. 均等積立と段階増額積立

ガイドラインは積立方式について、次のように整理しています18。

段階増額の「適切な引上げ」の考え方

令和6年の改定版では、段階増額積立方式の引上げ幅について、次の考え方が示されています18。

均等積立方式とした場合の月額を基準額とし、計画の初期額は基準額の0.6倍以上、計画の最終額は基準額の1.1倍以内とする。

試算例(仮定: 計算例1の平均値17,640円/月を均等積立の基準額とする): 初期額は17,640円×0.6=10,584円以上、最終額は17,640円×1.1=19,404円以内、が目安の範囲になります。

ただしガイドラインは、この考え方は早期に引上げを完了して均等積立へ誘導するためのもので、工事費高騰などを踏まえた見直しで現在の額を大幅に引き上げることを制限するものではないと注記しています18。また、均等積立方式でも、長期修繕計画の見直しで増額が必要になる場合があるとしています12。

段階増額積立のマンションでは、築年数とともに必要な修繕費が増え、区分所有者の高齢化で負担も難しくなるため、早期に引上げを完了させることが望ましい、とガイドラインは書いています18。総合調査では段階増額積立が47.1%で、均等積立(40.5%)より多くなっています(第3章)。自分のマンションの値上げ提案が、当初から予定されていた段階的な引上げなのか、長期修繕計画の見直しによる増額なのかは、長期修繕計画と過去の総会資料で確認できます。

5. 値上げ・不足のときの選択肢と相談先

選択肢の整理

公的資料に出てくる対応を並べると、次のようになります。どれを選ぶかはマンションの状況と総会での合意によって決まるもので、この記事ではどれが良いかを判断しません。

選択肢公的資料での扱い出典
長期修繕計画を見直し、必要額を計算し直す5年程度ごとの見直しが必要とされる12
修繕積立金を増額する(均等積立へ切り替えを含む)段階増額は早期の引上げ完了が望ましいとされる18
修繕時に一時金を徴収する将来の負担増を前提とする方式として合意形成の難しさに留意18
金融機関から借り入れる積立方式の一つとして記載18
専用使用料等からの繰入を見直す実際の収入を上回る見込みは避ける13

増額と税制の関係

修繕積立金を一定以上に引き上げた管理計画認定マンションのうち要件を満たすものは、一定の大規模修繕工事を行った翌年度の建物の固定資産税が減額される「マンション長寿命化促進税制」の対象になります。引上げの基準は、ガイドラインの目安の「3分の2が収まる幅」の下限(機械式駐車場の加算を含む)を下回る額から上回る額への引上げで、マンション管理士または建築士による修繕積立金引上証明書が必要です13。適用期間や他の要件は変わることがあるため、自治体の税務担当に確認してください。

公的な相談窓口

国交省は2026年9月28日の周知文で、大規模修繕工事の発注等に関する相談窓口として次の2つを案内しています。マンション管理士や建築士などがアドバイスを行うとされています19。

窓口内容電話番号
(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター「住まいるダイヤル」修繕工事の相談。見積費用は無料の「見積チェックサービス」あり03-3556-5147
(公財)マンション管理センター建物・設備の維持管理の相談03-3222-1519

出典: 19

あわせて、自治体によっては専門家派遣や専門家による相談窓口を設けている場合があるので、まずはお住まいの自治体に確認するよう案内されています19。

自分たちで試算するための公的なツールとして、住宅金融支援機構の「マンションライフサイクルシミュレーション」と、マンション管理センターの「長期修繕計画・修繕積立金算出サービス」も同じ周知文で紹介されています19。

築年数が進み、修繕を続けるか建て替えるかを比べる段階になった場合は、マンションを建て替えられる基準とマンション建て替えで資産価値はどうなるかも参考にしてください。

6. 大規模修繕の発注をめぐる注意(2026年9月の動き)

公取委の排除措置命令と国交省の周知

2026年9月28日、関東地方のマンション大規模修繕工事の発注をめぐり、工事の受注者と、その工事の設計コンサルタント業務の受託者が、独占禁止法違反として公正取引委員会から排除措置命令を受けました。国交省は同日、管理組合向けに相談窓口や留意点の周知を行っています19。事案の詳細は公正取引委員会の公表資料に掲載されています20。

周知文の要点は次のとおりです19。

その後の国の検討

長期修繕計画作成ガイドラインは見直しの検討に入っており、修繕積立金の考え方に関わる資料が今後更新される可能性があります。値上げ案を検討する時期によっては、最新の資料を確認してください。


まとめ


免責事項: この記事は確認日(2026年10月10日)時点の公開情報に基づいて作成しています。ガイドライン・統計・制度はその後変更される可能性があります。記事中の計算例は、明記した仮定に基づく試算であり、特定のマンションの必要額や値上げの妥当性を示すものではありません。修繕積立金の値上げや長期修繕計画の見直しなどの判断は、管理組合での検討のうえ、マンション管理士・建築士などの専門家や、自治体・公的機関の相談窓口にご相談ください。税制の適用は自治体の担当窓口でご確認ください。

出典一覧

出典・注

  1. 国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(平成23年4月、令和6年6月改定)表紙 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001747009.pdf (確認日 2026-10-10) ↩

  2. 国土交通省 長期修繕計画標準様式・ガイドライン、修繕積立金ガイドラインの掲載ページ(「最終改訂:令和6年6月7日」) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000052.html (確認日 2026-10-10) ↩

  3. 同ガイドライン p.3「1 ガイドラインの目的」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001747009.pdf (確認日 2026-10-10) ↩

  4. 同 p.5「(1) 修繕積立金の額の目安の算出方法と留意点」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001747009.pdf (確認日 2026-10-10) ↩

  5. 同 p.7「計画期間全体における修繕積立金の平均額の目安(機械式駐車場を除く)」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001747009.pdf (確認日 2026-10-10) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5

  6. 同 p.17-18「5 修繕積立金の主な変動要因について」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001747009.pdf (確認日 2026-10-10) ↩ ↩2 ↩3

  7. 同 p.8「機械式駐車場がある場合の加算額」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001747009.pdf (確認日 2026-10-10) ↩ ↩2 ↩3 ↩4

  8. 同 p.6「計画期間全体における修繕積立金の平均額の算出方法」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001747009.pdf (確認日 2026-10-10) ↩

  9. 同 p.9「修繕積立金の額の目安との比較方法」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001747009.pdf (確認日 2026-10-10) ↩ ↩2 ↩3

  10. 同 p.10-11(モデルケースの計算) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001747009.pdf (確認日 2026-10-10) ↩

  11. 同 p.11「(3) 修繕積立金の額の目安を活用するに当たっての留意点」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001747009.pdf (確認日 2026-10-10) ↩ ↩2

  12. 同 p.15「(2) 修繕積立金の積立方法を確認することの重要性」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001747009.pdf (確認日 2026-10-10) ↩ ↩2 ↩3

  13. 同 p.12-13「(4) 専用使用料等からの繰入れに関する留意点」「(5) マンション長寿命化促進税制について」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001747009.pdf (確認日 2026-10-10) ↩ ↩2 ↩3

  14. 国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果」調査の概要 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001752287.pdf (確認日 2026-10-09) ↩

  15. 同 p.26 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001750161.pdf (確認日 2026-10-10) ↩ ↩2 ↩3

  16. 国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果」概要 p.25 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001750161.pdf (確認日 2026-10-10) ↩ ↩2 ↩3

  17. 同 p.29 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001750161.pdf (確認日 2026-10-10) ↩ ↩2 ↩3

  18. 同 p.14「4 修繕積立金の積立方法について」(段階増額積立方式における適切な引上げの考え方) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001747009.pdf (確認日 2026-10-10) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7

  19. 国土交通省 報道発表「マンション大規模修繕工事の発注等に関する相談窓口の周知等について」(令和8年9月28日)および別紙・別添 https://www.mlit.go.jp/report/press/house03_hh_000279.html / https://www.mlit.go.jp/report/press/content/002024627.pdf (確認日 2026-10-10) ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6

  20. 公正取引委員会 報道発表(2026年9月28日、国交省周知文の注記に記載のURL) https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2026/sep/260928_daiyon.manshon.html (確認日 2026-10-10) ↩

  21. 国土交通省 報道発表「『マンション大規模修繕工事の発注等の適正化に関する検討会』の設置・開催について」(令和8年9月29日) https://www.mlit.go.jp/report/press/house03_hh_000280.html (確認日 2026-10-10) ↩

  22. 国土交通省 報道発表「長期修繕計画作成ガイドラインの見直しに向けて検討します」(令和8年10月7日) https://www.mlit.go.jp/report/press/house03_hh_000284.html (確認日 2026-10-10) ↩